「ACC Grantees’ Voices」を6月30日に開催しました。当日はモデレーターに鷲田めるろさんをお迎えし、キュレーションの分野で活動されている熊倉晴子さん(ACC 2025)と半田颯哉さん(ACC 2024)に、フェローシップ体験についてスライドを交えてお話しいただきました。
熊倉さんは、昨年ジョグジャカルタを拠点にインドネシアに3ヶ月滞在し、現地のアートコレクティブとの活動を軸に、美術史や歴史表象に関する調査を行いました。現地では、国家によって形づくられた歴史観を、市民や研究者が共同で検証し語り直す実践や、女性アーティストの再評価、地域に根ざしたアートコレクティブの活動などを訪ね歩き、それらを通して、美術館や展覧会を中心に捉えてきた自身のキュレーションのあり方を批判的に見つめ直す機会となったと語りました。
ACCのフェローシップでは、滞在中の活動に柔軟性が認められています。熊倉さんは、現地では綿密なプランを立てるのではなく、人との関係を築きながら偶然の出会いや対話を大切にしたことで、当初想定していた以上の多くの学びを得ることが出来たと振り返りました。さらに、今回のフェローシップを通じて、今後の活動につながる新たな問いや視点を得ることができたと締めくくりました。
半田さんは、2025年7月から12月までニューヨークを拠点にアメリカに滞在し、原爆開発計画「マンハッタン計画」に関するリサーチや、アジア系アーティストをはじめとする現代美術の動向調査を行いました。自身の作品制作やキュレーションにつながるリサーチに加え、多くのアーティストやキュレーターとの交流を重ねるとともに、同時期にACCニューヨークフェローシップでアメリカに滞在していた同期フェローとのネットワークが活動を大きく支えたことを紹介しました。
また、ニューヨークのアートシーンを実際に体験したことで、その魅力だけでなく現状や課題も客観的に捉えられるようになったこと、さらに世界各国から集まった優れたフェローたちとの出会いを通じて、自身の視野や向上心が大きく広がったと振り返りました。また、同期フェローとの交流はフェローシップ終了後も国境を越えて続いており、それがニューヨークフェローシップの大きな魅力の一つであると語りました。最後に、これから応募を考える人に向けて、英語力の向上や事前のネットワークづくりの重要性についてもアドバイスが送られました。
クロストーク・会場Q&A

続いてのクロストークでは、モデレーターの鷲田めるろ氏を交え、「キュレーターとアーティストの関係性」や「海外フェローシップで得られるもの」をテーマに意見が交わされました。
熊倉さんは、インドネシアでの経験を通じて、人との関係性を築きながら実践を重ねることの重要性や、既存の美術館・キュレーションのあり方を改めて問い直す契機となったことを紹介しました。一方、半田さんは、アーティストとキュレーターという二つの立場を持ちながらも、それぞれの役割や責任を意識して活動していること、また海外で築いたネットワークは、帰国後の共同プロジェクトや新たな展覧会につながる貴重な財産になっていると語りました。
会場との質疑応答では、ACCフェローシップを通じて得られる経験は、調査成果そのものだけでなく、新たな視点や問い、人とのつながりが、その後の創作やキュレーション活動へと発展していくことに大きな意義があることが共有されました。
最後に、これからACCの助成を検討している方々に向けて、ACCの活動やフェローシップについてご紹介する時間を設けました。
交流会
トークセッション終了後には、お集まりいただいた方々との交流の時間には、参加者同士の交流に加え、ACCアルムナイや2026年度グランティとの交流も活発に行われ、終始和やかな雰囲気に包まれたイベントとなりました。
本イベントが、ご参加いただいた皆様にとって、ACC助成プログラムへの理解を深めるとともに、新たな出会いや挑戦につながる機会となれば嬉しく思います。

