ACC日本2026年度グラント受賞者ならびに日本での審査にご協力いただいた審査員の皆さまを以下のとおり発表いたします。
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ACC日本 2026年度グラント受賞者
(名字アルファベット順)
◆ ニューヨーク・フェローシップ (米国・6ヶ月) ◆
ハラサオリ Saori HALA
ダンス
ニューヨークにおける身体表現の歴史、芸術とエンターテインメントの関係、ならびにそれが戦後日本に与えた影響を調査する。NY Public Library for the Performing ArtsやThe Kitchen、MoMA等でのアーカイブ調査を通じ、1960年代のポストモダンダンスから2000年代以降の領域横断表現までを体系的に捉える。また、身体表現が芸能と芸術の文脈でどのように価値づけられているかを観察し、アメリカのエンターテインメント産業の歴史とその戦後アジアへの影響を、現在の日米関係とともに再考する。さらにアーティスト主導のプラットフォームや領域横断的な文化継承の方法を学び、その知見を自ら運営する国内身体表現作家のプラットフォームに還元する。
ACC / Saison Foundation Fellow *2
Photo by Nanako Kobayashi
滝戸 ドリタ TAKIDO Dorita
ビジュアルアート
気候変動や生物多様性の喪失といった相互に連関する環境課題を背景に、ニューヨークにおける環境や共生をめぐる実践を調査する。美術館やコミュニティガーデン、都市農業、バイオラボ、環境系アートプロジェクトなど「自然とアートをつなぐコミュニティ」との対話を軸に据え、生態学と持続可能性への包括的アプローチを追求する市民プロジェクトに参加しながらリサーチを行う。さらに、自然やバイオベースの実践に取り組む研究施設を訪問し、インタビューを実施する。アーティストや研究者、地域住民、教育プログラム参加者など多様な立場の人々との対話を通じて、実践の構造やアクセスのあり方を学び、日本の状況との比較を通して考察する。
◆ 個人フェローシップ ◆
アオキ裕キ Yuuki AOKI
ダンス
日本 → マレーシア(1ヶ月)
マレーシアのプナン族のコミュニティに滞在し、狩猟採集の営みを身体的に経験することで、自然と共に生きる知性と都市生活における身体性の違いを学ぶ。プナン族と関わりの深い文化人類学者の協力を得ながら、採集や移動、食事の準備といった日々の営みに関わり、言語に頼らない共同作業を通じて、互いの価値観や身体観が立ち上がる文化交流を探究する。現代社会への重要な問いともなるプナンの共同性と循環の思想を習得し、都市の身体と狩猟採集の身体をつなぐ新しい表現の可能性を探る。コミュニティの価値観を尊重しつつ、都市では得られない、自然と結びついた人間の身体感覚を獲得し、創作やワークショップに還元することを目指す。
ACC / Saison Foundation Fellow *2
Photo by Chihiro Okamoto
遠藤 麻衣 Mai ENDO
ビジュアルアート
日本→インドネシア(4ヶ月)
日系アメリカ人ダンサー・テイコ・イトウ(1913–1958)の身体史と実践を中心に、1930年代のインドネシア、日本、アメリカを跨ぐ「東洋舞踊」の継承と変容の過程を調査する。ジョグジャカルタおよびデンパサルを中心に、歴史資料や口承記録を収集分析するとともに、現地舞踊家や研究者との対話や身体ワークを通して、周縁化された身体知や感覚的技法の異文化間での翻訳・再構成を探求する。特に、戦時期日本の舞踊研究で周縁化されてきた日系アメリカ人女性ダンサーの実践を再定位し、植民地主義的文化政策や国際的想像力のもとでアジア・ディアスポラ的身体がどのように自己表現を形成し得たかを検討する。舞踊史における見過ごされた実践を可視化するとともに、身体を媒介とした国際的な知識交流の新たなモデルや視点もたらすことを目指す。
Blanchette Hooker Rockefeller (BHR) Memorial Fellow(ブランシェット・フーカ―・ロックフェラー(BHR)メモリアルフェロー)*1
古川 はるな Haruna FURUKAWA
民族音楽学
日本 → カンボジア(2ヶ月)
演奏学習を含む参与観察を通じ、クメール伝統音楽と身体知の伝承を探究する。竹笛「クロイ」を中心に、現地の音楽家や楽器製作家と交流し、身体知や暗黙知を演奏者として自らの身体に内在化することを目指す。現地の生活環境に身を置き、半構造的・非構造的インタビューに加え、演奏の録音・録画や試験的セッションを通して、年中行事や人生儀礼に結びつく民俗音楽の実践を記録する。同時に、記憶に根ざした個人的・集合的な歴史としての音楽体験に関するナラティブを収集する。これらの活動を通じて双方向的な文化交流を深め、継続的な国際ネットワークの形成および伝統音楽に対する理解と研究の促進に寄与するとともに、自身の演奏実践を深化させることで、将来の共同研究や国際交流事業の基盤構築を目指す。
日原 聖子 Seiko HIHARA
ビジュアルアート
日本 → ベトナム(2ヶ月)
ベトナム各地を巡り、ベトナムの民族的な刺繍の歴史と社会における手芸・手仕事の位置づけ、縫製工場の働き手についてリサーチを行う。フランス植民地期に培われたテーラーや個人の縫い手の巧みな縫製技術が、今日の繊維産業の構造の中で不可視化されている状況にも着目する。また、日本での就労経験を持つ縫製工場の従業員へのインタビューも行い、繊維産業や手仕事が内包する構造を歴史的・社会的文脈の中で考察する。さらに、北部地域において少数民族による刺繍生産が土産産業化している実態も含め、現地の人々との交流を通じて、布が内包する構造について理解を深め、今日の日本で見えていないものの可視化を試みる。
Mandarin Oriental Hotel Group – ACC Fellowship *4
Photo by Naotatsu Kaku
川上 アチカ Atiqa KAWAKAMI
井戸沼 紀美 Kimi IDONUMA
映画・ビデオ・写真
日本 → インドネシア、タイ(3ヶ月)
アジアにおけるオルタナティブ映画ネットワークのリサーチを行う。厳しい政治的・社会的制約下で、商業映画から独立し、芸術としての映画の上映、制作、教育の場を生み出すコレクティブの実践や戦略を記録・考察する。インドネシアではコミュニティ運営や住民との関係構築について学び、日本―インドネシア間の映画コレクティブの交流や、植民地主義と映画をテーマにした共同ワークショップや上映会を模索する。タイではバンコク実験映画祭およびFilmvirus groupに関わるウィワット・ルートウィワットウォンサー氏が多様な団体と連携しながら手がけてきた上映会、短編映画祭、出版等の活動を調査する。成果を報告会や出版、オンライン等で共有し、持続的なアジア映画コレクティブ・ネットワークの形成を目指す。
森下 周子 Chikako MORISHITA
音楽
日本 → 米国(2ヶ月)
1950年代にニューヨークで活動した作曲家・外山道子の調査を起点に、戦後に形成された実験音楽の思想とネットワークを現地で検証する。森下はヨーロッパで展開したポスト・ケージ的実践の影響を受けており、本フェローシップでは、その源流となるケージ周辺の動向のなかで育まれた実験音楽がどのように生まれ、受容され、保存され、継承されてきたかを学ぶ。滞在中は作曲家、演奏家、研究者、アーカイヴィストらとの対話を通じて現在の実践との接続を考察し、その成果を創作に還元するとともに、将来的な共同制作や新作の展開を視野に入れる。さらに外山の実践の再構成を通して、当時の文化的・制度的包摂性を問い直し、今後の文化的対話やコミュニティのあり方を探る。
Photo by Koto Hirai
谷中 佑輔 Yuske TANINAKA
ビジュアルアート
日本→香港(6ヶ月)
香港の日常生活において伝統中国医学が治療としてどのように実践されているかを学ぶ。特に、身体やその状態が臨床の言葉でどのように表現され、現代医学と共存しているかに焦点を当てる。日本・韓国・シンガポールでのリサーチを踏まえ、香港で実践の場に身を置き、観察・傾聴することで、進行中のプロジェクト《Time to Heal》の基盤を強化する。脈診・鍼灸の講義や臨床家との週1~2回のセッションを通じ、症例の考え方を学び、言語・触覚・身体技法・時間に注目したフィールドノートを作成し、彫刻や振付に反映させる。本フェローシップを通じて、深く身体化されたリサーチ手法と文化的理解を獲得し、今後の実践を深化させるとともに、身体技法と治癒の次元から東アジアを考察する視点を公共に提示することを目指す。
ACC Hong Kong Special Anniversary Fellowship *3
*1「Blanchette Hooker Rockefeller (BHR) Memorial Fellow(ブランシェット・フーカ―・ロックフェラー(BHR)メモリアルフェロー)」は、ビジュアルアート分野のグランティ1名に授与しています。
*2「ACC / Saison Foundation Fellow」は、公益財団法人セゾン文化財団による助成金が充当される活動に授与しています。
*3「ACC Hong Kong Special Anniversary Fellowship」は、ACC香港財団が設立40周年を記念して提供する「個人フェローシップ」の特別枠となります。
*4「Mandarin Oriental Hotel Group – ACC Fellowship」は、マンダリン・オリエンタル財団による助成金が充当される活動に授与しています。
2026年度ACC日本 グラント審査員
(敬称略、名字アルファベット順)
ビジュアルアート分野
橋本梓(国立国際美術館 主任研究員)
岡村恵子(東京都現代美術館 学芸員)
鈴木ヒラク(アーティスト/東京藝術大学 先端芸術表現科 准教授/2011年ACCグランティ)
パフォーミングアーツ分野
小野晋司(横浜市芸術文化振興財団 チーフプロデューサー/横浜赤レンガ倉庫1号館 館長)
高橋宏幸(桐朋学園芸術短期大学 演劇専攻 教授/2012年ACCグランティ)
音楽分野
毛利嘉孝(東京藝術大学 大学院国際芸術創造研究科長 教授、音楽学部音楽環境創造科 教授)
沼野雄司(桐朋学園大学音楽学部 教授)
助成
公益財団法人セゾン文化財団

公益社団法人企業メセナ協議会 社会創造アーツファンド

一般財団法人アジアン・カルチュラル・カウンシル (ACC) 日本財団
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