ACCファミリーの皆様へ。

この困難な時期、私の心と想いは皆様と共にあることをニューヨークからお伝えします。

健康危機のさなか、私たちは人間性の危機にも直面していることは明らかです。これまでの自然災害やテロ行為、国際紛争と同様に、新型コロナウイルスの世界的流行は不信感、誤解、偏見を引き起こしています。

異なる二つの人種、文化を持ち、アジア系アメリカ人の女性であり、またACCという文化交流団体を率いている私にとって、この事態は、個人的にも仕事上でも、非常に心が痛むことです。パンデミックがニューヨークを席巻しだしたとき、私は人種差別がエスカレートしていくのを目の当たりにしました。私の6歳になる娘は、地下鉄で見知らぬ人が彼女を避けて遠ざかるのを見て、「私はコロナウイルスを持っていないのに」と抗議しました。私達のスタッフが罵倒されたり、唾を吐かれたりした話も聞きましたし、攻撃されたグランティの心の痛みを目の当たりにしました。

偏見は、心の深くで痛みを伴う方法で燃え上がり、相互に関連し合う世界において社会の健全性を脅かす分断を生み出します。理解と尊敬の欠如は、確固たる市民社会の基盤である多様性を利用し、私たちを互いに分断し合い、最悪のかたちの憎しみを生み出します。

私がこれまで以上に情熱を傾けているのは、国際的な対話と尊重を推進するアジアン・カルチュラル・カウンシルの活動と使命が最も重要であるという信念からです。

ACCの根底にあるのは、文化交流を通じて、思いやり、共感や相互理解を育むという揺るぎない信念です。しかし、それは実のところ何を意味しているのでしょうか。また、海外への渡航や人と人との交流が無期限に停止されている今、文化交流とは何なのでしょうか。 ACCにとっての文化交流とは、アルムナイ、パートナー機関、支援者などの幅広いネットワークの中で、またそれを超えて、国際的なつながりを維持することを意味しています。

COVID-19パンデミックが世界を席巻した際、私たちのチームはまず、現在フェローシップ期間中の方たちの緊急のニーズに対応するために行動を開始しました。私たちは、アジアと米国にいるフェローの一人一人と迅速に連携し、彼らが安全に帰国できるようにしました。さらには、米国に残ることを選択した大学院生や個人フェローには、安定した住居、メンタルヘルスサービス、金銭的な援助を提供しました。

このようなACCファミリーの方々の状況が少し落ち着いたところで、私たちは今、アルムナイや世界中で支援している芸術分野における仲間たち、そして私たちの活動を可能にしてくれているすべてのパートナー団体のニーズに目を向けています。私たちは次のステップに向けて熟考の上行動しており、不確実な今後に対応するため、ACCがどのようにして差し迫った現状の中で最善の策を提供できるかを戦略的に考えています。

文化的価値観は、人間としての私たちの核となるものであり、世界を見る目、他人や自分自身への接し方、地域社会への還元の仕方などに影響を与えています。ACCは、芸術の力を活性化し、対話を促し、インスピレーションを刺激し、国境を越えて永続的な関係を築くための場所を創造します。ACCのプログラムでは、アーティストや芸術関係者が世界中の仲間と関わり、文化交流の経験を積む機会を提供しています。

この危機が過ぎ去り、変化した世界に戻ってきたとき、私たちは皆、意識的な決断をしなければなりません。私達は、誤解と不信が生み出す社会の断絶が私たちを分断させることを受け入れてしまうのでしょうか。それとも、私たちに突きつけられた次の試練を乗り切るため、再構築し、再接続するのでしょうか。 ACCは56年の歴史の中で、芸術や文化交流を通じた国際社会の発展に貢献してきました。私たちのグローバル・ファミリーである皆様も同じ心でいてくださることを心から願っております。

アジアン・カルチュラル・カウンシル 
エグゼクティブ・ディレクター
ミホ・ウォルシュ